
| 畑7 | 玉ねぎ | ||
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晩秋。ビニールハウスの一角に、極細の芽葱がまるで風にそよぐかのように土上にふさふさと生えています。「あ、今日はワケギの収穫?」と向けたカメラの奥ですぐさま訂正の声。「玉ねぎの苗!」えっ。これが玉ねぎになるの?こんな細くて小さいの?!一体どれだけの時間がかかるの?驚く私と「知らないあなたの方が不思議だわ」呆れ顔の農家の母。先ほどからわっさりとひと掴みの芽葱を引き抜いては、マッチ棒ほどの太さに生育したものを選りすぐり籠の中に入れ、それに至らぬ細いものはまた根に土を被せています。 「こうやってね、宿しておくのよ。また育ったらね、植え替えるの」宿しておく、ねえ。未熟な苗はその時が来るまで再び土に養ってもらうのだ、といいます。「この辺りではみんなそう言うよ」と笑うけど、いつもお母さんの言葉には、胸の深いところを掴まれてしまうのです。「育てる」とか「栽培する」とは少し違う。人の力では及ばぬもの、自然の大きな営みにお任せします、という母なる大地への深い愛にも似た思いを感じる「宿す」という言葉、その優しさ。すごくいいなあ。だからまた来たくなっちゃうんだなぁ。 |
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「ベッドへ行くよ」と苗のカゴを抱えて皆、移動です。??ふと下の畑を見下ろすと、畝に沿って細長いビニールシートが覆い被さるように何列にも張ってあります。なるほど、これが玉ねぎの「ベッド」。シートに紙コップの底くらいの大きさの穴が横に8個ほど並んでいて、今度はその穴ひとつひとつに苗1本1本を植え付けます。ゆったりとして温か、雑草の心配も少ないベッドのお陰で、玉ねぎはその球を肥大させることができるのです。 まずは指で土に穴を空けてそこに苗を植え、再び土を戻して軽く固めてやるのですが、今日の土はなんとも手強い。今まで訪れた畑はさらさらと指の合間から溢れていくようなキメの細やかな沃土だったのに、ここは卓球ほどの大きな土塊がゴロゴロとして乾き堅いこと堅いこと。苗は2カゴ一杯。延々と植え付け作業は続きます。それにしてもこんな手強い土にか細い根が定着するのかと心配していたら、「玉ねぎはこんな土地でよく育つんだよ」とのこと。「そういえば、アスファルトから顔を出す大根なんてのもあったねぇ。野菜は実にたくましい!」とおかあさん、ズボ、ズボといいテンポで植え付けが進みます。 |
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マッチの先にも満たないこの小さな球が収穫されるのは来年の5月から6月。苗の生育を含めると玉ねぎの育成には10ヶ月近くもかかります。食卓に欠かせないこの野菜、随分と長い時を土に育んでもらうのですね。堅い土への穴あけに苦闘するも、音を上げることなどできなくなっちゃった。山芋、落花生、人参に大根、後ろの畑で収穫した赤とうがらしも、向こうの柿の木、山の竹、杉の木々たち。「全部土からおすそ分けしてもらってるんだよ」本当にそう、そうなんだ。 立冬を過ぎた陽は釣瓶落とし。薄ぼんやりとしてきた西の空を背に頑張った甲斐あり、全てのベッドに玉ねぎの苗が納まりました。ふぅ。命を宿す土のちからよ、ともの思いに耽っていると「野菜だけじゃなくて、はやく子供も育てるといいねえ」という母なるひと声…。 いつも、心を掴まれるわけです、はい。 |
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PS: *玉ねぎレシピ オニオングラタンスープ 今月はそんな玉ねぎが主役のひと品「オニオングラタンスープ」に挑戦です。 ハインツでご紹介しているレシピはどれも手軽ですが、実際につくってみるとその本格的な美味しさに少し驚きますよ。普段の食卓やおもてなしで、「こんな技、いつ身につけたの?!」と言わせちゃうかも。 *野菜メモ 玉ねぎは消化を助けたり、新陳代謝を高める薬効が期待できるとか。つやつやとしてしっかりと乾燥しているものを選ぶと良いそうですよ。陽の当たらない場所で吊るしておくと長期保存が可能です。 *おいしいコラム「おいしい台所」 ?ハインツを連れて畑へいこう第七回? 奥村文絵=構成・文・写真 +次を読む +前を読む +バックナンバー |